【源頼朝の寝所警固人11人選任】北条義時が鎌倉幕府第二世代の筆頭となった人事

武家政権を樹立した源氏棟梁といえば、源頼朝です。

あまりにも有名な人物であり、御恩と奉公というシステムにより御家人を強く統制していたかのようなイメージを持ちがちですが、実は御家人の統制に相当苦労しています。

特に、旗揚げ直後の時期は、有力豪族たちの意見に右往左往させられていました。

源頼朝は、そんな苦しい時期を打破するため、あれこれ手を打ちますが、そのうちの1つとして、二世御家人を育てて権限委譲を進め、そのために採用したのが本稿で紹介する寝所警固人11人選任です。

源頼朝と東国武士団との微妙な力関係

治承4年(1180年)10月20日に富士川の戦いに勝利した源頼朝は、その勢いのまま、撤退する平家軍を追撃して京に雪崩れ込もうと考えます。

ところが、上総広常千葉常胤三浦義澄などの東国武士団がこれに反対して東国を固めるよう主張します。また、同盟関係にある武田信義が駿河、安田義定が遠江と坂東と都を結ぶ東海道の途上を制圧しているので、彼らの意向を無視して上洛することもできませんでした。

この時点での源頼朝は坂東武士団の神輿に過ぎず、いまだ自身では大きな力を持たない源頼朝は、これら東国武士の意志に逆らうことができませんでしたので、結局は鎌倉に戻るという選択をします。

源頼朝にとっては、源氏の棟梁としてのプライドをへし折られたに違いありません。

力のなさを痛感した源頼朝は、鎌倉にて政治力を行使し、自らの力を高めることに尽力します。

源頼朝は、まずは東国武士団を自らの完全指揮下に組み込むため、自分の下に集った武士たちに本領安堵と敵から没収した領地の新恩給付を行ない、自ら(鎌倉殿)と御家人との力関係を明確化します。

そして、この本領安堵と新恩給与(御恩)の対価として、臣下となった武士たちに兵役を求めることにより(奉公)、源頼朝は急速に力をつけ、鎌倉を本拠地として開拓し東国一帯にその支配権を広げていきます。

源頼朝による鎌倉幕府第二世代の抜擢

源頼朝による寝所警固人11人選任

また、源頼朝は、平家打倒のために集ったために自らの命令に従いにくい第一世代の御家人の力を削ぐため、第二世代の御家人の育成を図ります。

言うことを聞かない重鎮ではなく、イエスマンの若者をはべらせたいというのは、権力者の性です。

具体的な方法として、源頼朝は、治承5年(1181年)4月7日、若い御家人の中から武芸に優れかつ心を許せる者を選定して寝所警固をさせることとし、次世代を担わせることを内外に知らしめ、鎌倉幕府有力御家人について第一世代から第二世代への権限委譲を予告します。

このとき選ばれた寝所警固人は、以下の11人でした。

御家人名誕生年(年齢)親族
1江間四郎(北条義時1163年(18歳)北条時政の次男
2下河辺庄司行平下河辺行義の子
3結城七郎朝光1168年(14歳)小山政光の三男
4和田次郎義茂和田義盛の弟
5梶原源太景季1162年(20歳)梶原景時の嫡男
6宇佐美平次実政
7榛谷四郎重朝小山田有重の次男
8葛西三郎清重1162年(20歳)豊島清元の子
9三浦十郎義連三浦義澄の子
10千葉太郎胤正1141年?(41歳?)千葉常胤の嫡男
11八田太郎知重八田知家の子

鎌倉幕府御家人の序列と大抜擢人事の意味

このときの鎌倉幕府御家人には、以下の序列があり、源氏一門を「門葉」、源頼朝に近い御家人を「家子」と呼び、一般御家人である「侍」と区別をしていました。

1門葉源氏一門
2家子源頼朝股肱の御家人
3一般御家人

そして、寝所警固人の中から北条義時を筆頭者として挙げ、家子専一(源頼朝親衛隊長)に任命するという大抜擢人事を行います(吾妻鏡、養和元年4月7日条・宝治2年閏12月28日条)。

これらの事柄は、北条家礼賛の歴史書である「吾妻鏡」に記載されているため、内容に注意して理解する必要はあるのですが、源頼朝挙兵から始まる鎌倉幕府の創成期にほとんど功績を立てていない北条義時がこのような最重要ポストに就任するということから、いかに源頼朝が御家人統制に苦労していたかがわかります。

東国武士団第二世代の活躍

源頼朝による寝所警固人選任により、徐々に鎌倉幕府第二世代の世代交代が始まります。

特に、家子専一とされた北条義時は、寿永元年(1182年)11月に起こった源頼朝の不倫相手である亀の前を北条政子の命を受けた牧宗親が襲撃するという「亀の前事件」の際、牧宗親に恥辱を与えたことに抗議して伊豆国に下国してしまった北条時政に従わず、鎌倉に残留することにより源頼朝への忠誠を示し、源頼朝から賞賛されています。

そして、このことが北条義時の北条家の権力簒奪、鎌倉幕府の権力簒奪へとつながっていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。