【源仲章】北条義時と間違えて殺害された宇多源氏

源仲章(みなもとのなかあきら)は、平安時代末期から鎌倉時代前期に、廷臣兼御家人として活躍した武家貴族です。

突出した才能があったわけではないですが、源実朝の教育係を務め、その豊富な知識から重用された人物です。

阿野全成の子である阿野頼全の誅殺に関与するなどいくつかの歴史的事件に関与しているのですが、なによりも源実朝暗殺の際に北条義時と間違われて殺された人物とし有名です。

源仲章の出自

出生

源仲章は、平安時代末期に、宇多源氏雅信流・源光遠の子として生まれます。

正確な年月日や母親などは不明であり、その後の元服の経緯などの前半生の詳しい内容は分かっていません。

院の近臣と御家人の兼務

父・源光遠も後白河院近臣として院判官代を務めるなどし、源仲章もまた院近臣として後鳥羽上皇に仕えて盗賊の追捕などに活躍していました。

また、系統が違うとは言え、源氏二十一流の1つという縁から、遅くとも正治2年(1200年)頃にら鎌倉幕府にも通じて在京のまま御家人としての資格を得て、京において朝廷と幕府との連絡係を務めるなどしています。

阿野頼全誅殺(1203年7月16日)

建仁3年(1203年)6月23日、鎌倉で北条時政と比企能員源頼家との権力争いの結果、北条時政方の阿野全成が将軍源頼家への謀反の疑いで捕らえられ誅殺されるという事件が起こります。

このとき、源頼家は、京にいた阿野全成の三男であった阿野頼全の殺害をも決定します。

阿野頼全が、将来阿野全成の仇討を行う可能性があること、源氏の血を引く人物であるため将来鎌倉殿に担ぎあげられる可能性があることなどから、源頼家からするとここで殺してしまわなければならない人物だったからです。

そこで、源頼家は、同年6月24日、大江能範を上洛させ、京にいる在京御家人である源仲章・佐々木定綱らに阿野頼全の殺害を命じます。

これにより、源仲章・佐々木定綱らは、同年7月16日、阿野頼全がいる京の東山にあった延年寺に刺客を送り、これを誅殺しています(吾妻鏡・建仁3年7月25日条)。

鎌倉下向

源実朝の侍読となる(1206年)

その後、鎌倉殿が源頼家から源実朝に引き継がれたのですが、鎌倉幕府の命を忠実にこなす源仲章は、鎌倉から信頼が厚く、また武家貴族として高い教養を備えていたこともあり、第3代鎌倉殿となった幼少の源実朝の教育係として請われます。

これを受け、源仲章は、建永元年(1206年)頃、鎌倉に下向して源実朝の侍読(教育係)となり、御所の近くに邸宅を与えられます。いうなれば源実朝のブレーンです。

鎌倉に下向した源仲章でしたが、廷臣としての地位も保持していたため、鎌倉と京を行き来しており、後鳥羽上皇の情報を鎌倉幕府に流していたとも、逆に二重スパイとして幕府内部の情報を院に伝えていたとも言われています。

政所別当就任(1216年)

源仲章は、学者として何らかの実績を残していた訳ではなかったのですが、文官の人材が乏しい鎌倉幕府においては博学ぶりが評価されます。

そして、源仲章は、建保4年(1216年)には一般政務・財政を司る政所の別当(長官)の1人に任じられました。

なお、政所の別当は2人~5人制で職務を担当しており、当時の別当としては、大江広元・源仲章・源頼茂・大内惟信などがいました。

任官

鎌倉幕府から厚遇された源仲章は、幕府内だけでなく朝廷でも厚遇されます。

具体的には、相模守・大学頭を経て、鎌倉幕府の推薦により建保6年(1218年)に従四位下・文章博士となり、順徳天皇の侍読を兼務して昇殿を許されるに至るまで出世します。

源仲章の最期

鶴岡八幡宮での拝賀式

承久元年(1219年)正月27日、鶴岡八幡宮において源実朝の右大臣拝賀式が行われることとなっており、源実朝の脇で北条義時が太刀持ちをする予定となっていました。

ところが、式典当日、北条義時が急に体調不良を訴えて館に戻ることとなり、急遽太刀持ちが北条義時から源仲章に交代されて始まります。

源仲章巻き添え死(1219年正月27日)

同日、八幡宮での拝賀式が終わって石段を下りる一行に、法師の姿に変装した源頼家の子・公暁が乱入し、源実朝が暗殺されるという大事件が起こります。

そして、このとき源実朝の太刀持ちをしていた源仲章もまた、北条義時と間違えられて一緒に暗殺されました(愚管抄)。

この源実朝暗殺事件は、北条義時陰謀説や、鎌倉御家人共謀説、後鳥羽上皇黒幕説などその原因について色々な説があるのですが、直前まで同行するはずだったのに暗殺の直前にその場からいなくなった北条義時に強い疑義があります(1000人とも言われる護衛をかいくぐってたった1人の公暁が源実朝の下にたどり着いており、怪しさ満載です。)。

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